人は誰もが、錯覚の中に自分自身の救いを見ているので、自分自身の錯覚を守ろうとするものです。そのために、その人は錯覚からその人を救おうとする人を、自分を攻撃してくる人だと信じるかもしれません。
そうなれば、その人は救おうとする人に対して、攻撃し返そうとするでしょうね。これが、クライアントさんとセラピストの関係において、時々起る現象なのです。
セラピストは、クライアントさんの自画像という、クライアントさんが最も大切にしている所有物を攻撃してくる人として見なされてしまうのです。
そして、その絵はクライアントさんがそれと知覚する通りに、クライアントさんの安心感になってきたので、セラピストは現実的に危険人物だとみなされてしまうかもしれません。
こうした心の在り様を一般的には投影と言うし、セッションにおいては「転移」と呼ばれたりします。
セラピストはクライアントさんにとって、本当は安心できる人物でなければならないのですが、転移が起きれば信頼関係は吹っ飛んでしまいます。
セラピストがクライアントさんに嫌われないように防衛するとしたら、それは論外ですが、一方で転移をしっかり見て、それをうまく扱えるようにならなければ、クライアントさんの癒しの機会が奪われてしまう可能性もあるということですね。
セラピストが直面することの中で、転移は最も難しい問題かもしれません。