自分で消化する

調子に乗ってつい食べ過ぎたり飲みすぎてしまったりすると、自分の胃や肝臓がそれ自身の力で充分に消化することができなくなって、もたれたり悪酔いしたりということになります。

そんな時に、胃の薬を飲んだり、二日酔いの薬を飲んだりして消化を助けてあげるわけです。食べ物や飲み物の場合にはそれで済むのですが、心の場合はどうでしょうか?

心の中に入ってきた様々なショックな出来事や衝撃などは、それがある程度のレベルのものであれば自分の力だけで消化してしまうことができるでしょう。

少し泣いたり、落ち込んだりしながら時とともに緩やかに消化されて心は元の健康な状態へと戻ることができます。

しかし、その衝撃の度合いがもう少し大きなものであった場合には、自分一人での消化する能力を超えてしまうことがあります。

そうすると、心はそれをなかったことにしてやり過ごそうとしてしまいます。成功すると、本人は衝撃をあまり感じることなく平静を取り戻すことができます。

但し、未消化なままの衝撃は例えば恐怖や怒り、絶望などの感情となって心の奥に残留することになるのです。

食べ物でいえば、食べ過ぎて完全に消化できなかった昨日の食べ物が胃袋の底に滞留したままで生活するようなものです。

そんなふうにして溜め込んでしまった未消化の感情も、それが何度となく繰り返されることで膨大な量に膨れ上がっていくことになってしまいます。

食べ物でいえば、もうこれ以上胃袋の中に未消化な食べかすを残したままにはしておけないという状態になっているのに、その上からまた食事をするような毎日のようなものです。

いつかは、その未消化の感情が何かのきっかけによって外側へと放出されるときがきます。そうなると、本人の理性ではそれを簡単に抑える事は難しいでしょうね。

心の未消化に効くような胃薬のようなものがあればいいのですが、残念ながらそんなものはありません。

つづく