確か小学生の頃だったと記憶しているのですが、学校から帰ってくるとテレビで昔の洋画を放映していることがあって、よくそれを見ていたことがありました。
その中で、一つとても印象に残っている映画があって、40年以上も前に見たにもかかわらず今だに忘れていません。
それは確かアメリカのギャングが主人公なのですが、悪の代表みたいな主人公がとうとう警察に捕まってしまい、死刑が決定しているのです。
そこに、彼のかつての友人であった牧師さんが留置所に面会にやってきて、今までの罪を悔いてまっとうな心になってあの世に行きなさいと説得するのです。
しかし、彼は最後まで悪のヒーローのまま死ぬといって聞きません。そして、とうとう最後の日、彼が処刑される日がやってきて、牧師さんが彼に訴えるのです。
最後の最後に、お願いがある。君をヒーローだと思って悪の道に行こうとする子供たちが君の処刑される姿をテレビで見ている。
だから、最後に怖がるみっともない姿をわざと子供達に見せてやって欲しい。そうすれば子供達が悪の道に行かずにすむと言うのです。
彼はそんなことできるわけもないし、したくもない。俺は最後まで悪党のヒーローのまま死んで行くんだと言って聞かないのです。
牧師はあきらめて、帰るのです。そして、とうとう彼が処刑されるときがやってきて、それをテレビで放映するのです。
彼は最後の最後、処刑される寸前になって、急に殺さないでくれ!と泣き叫んで、みっともない姿をみんなに晒したのです。
それを見ていた牧師さんが涙を流してその映画は終わりになるのですが、彼の心のうちを観客に委ねる映画なのだと思いました。
死ぬ直前になって一度だけ愛の行動をしようとしたのか、それとも本当に死刑の恐怖に負けてみっともない姿を晒してしまったのか、どっちなんだろうかと…。
でも、牧師さんの涙がすべてを語っているのだろうなと思ったのです。悪党の彼が一番したくない惨めな姿を子供たちに見せるという愛の行為だったのだろうと。
自分を守ろうとしない愛の行為というのは、本当にすばらしいと思います。とても感慨深い映画でした。