印象的な昔の映画 その3

この映画は幼い頃ではなくて、高校生くらいの時に見たものだったかもしれませんが、大好きな俳優である今は亡きスティーブ・マックィーンが主役でした。

確かテレビで途中から見たのでほとんどあらすじは覚えていませんが、彼が戦闘機のパイロットでその部隊の隊長だったかもしれません。

とにかく、とても厳しい人で本人が有能なため誰も逆らうことができないでいるのですが、この人人格的にどうなの?と思うくらいに激しいのです。

部下たちも表面的には付いていってはいるものの、心の中ではかなり彼を否定的に見ているのです。周りの人たちに疎まがれ、嫌われているのがありありと分かるのです。

映画を見ている自分もこんないやな奴にはあまり出くわしたくないなと思いながら見ていました。そして、映画の最後のほうで、彼は山の中腹に激突して飛行機ごと木っ端微塵になってしまうのです。

なぜそうなったのか理由は忘れましたが、その瞬間に自分の心の中で急激な変化がやってきました。それは、今までずっといやな奴だという思いばかりだったのが、そうではなくなったのです。

そして急にあの人はいい人だった、善良な人だったという思いがこみ上げてきました。きっと好きだったんだと分かったときに本当にこの自分の心の変化に驚いてしまいました。

映画の中でも、残された部下はみんな一様に泣いてるし、生きていたときのように憎んだままの人は誰もいなかったのです。

本当はみんなに愛されていた人だったのです。しかし、なぜこのような心の変化が起こったのかその時には分かりませんでした。

今ではその理由が分かります。彼が生きていたときには自分は彼に傷つけられたくないという思いを抱いて彼を見ていたために、防衛つまり攻撃的な知覚で解釈していたのです。

それが亡くなった途端に、もう彼に傷つけられる恐れはないと知った心が彼に対して無防備になったおかげで、それまで隠されていた愛の目が出てきたのです。

きっと自分は自覚のないままに、彼の愛の部分を自分の愛の知覚でずっと見ていたのだろうということです。亡くなって無防備になった瞬間に、その部分が現われて彼を好きだと思えたのです。

我々の知覚というものがどのくらいいい加減なものか、本当によく分かりますね。その時々の自分が見たいと思うものだけを選りすぐって見て、その上で都合のいい解釈をするということです。

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