以前ある人が次のようなことを言ったのです。「自分が幸せかどうかなんて考えたこともない。」それを聞いてドキッとしたのを覚えています。
なぜなら、その言葉の意味することは、自分が幸せかどうかということに関心がないということだからです。もっといえば、自分自身に関心を持っていないということ。
だから衝撃を受けたのですね。だって、誰だって自分の人生をより満ち足りた幸福なものにしたいと望んでいるのですから。
自分自身への関心を失くしてしまったら、どうなってしまうのだろうと思うわけです。けれどもこれこそが、個人的な苦しみから解放される唯一の生き方なのだろうと思うのです。
私たちは、なんらかの不自由さを感じると、そこから逃れたくて何か他のことに興味を向けるのです。そしてそこに没頭すればするほど、自分の問題から離れられると感じるのです。
その場合には、自分自身への関心があたかもなくなったかのように見えるのですが、根底には不自由さから解放されることへの関心が隠されているということです。
それも結局は、自分自身への関心がベースにあるということですね。自分のことが好きであれ嫌いであれ、関心を持っている限りは苦しみは避けられないのです。