人の心が十二分に癒されて、この世界から争いごとが消えうせて、嫌なことが一つも起きない、いわゆるユートピアになったらいいなと思うかもしれませんが、きっとそうはならないはずです。
この世界というのは、光と闇の対比によってできているのです。いいことがあれば、悪いことがあり、嬉しいことがあれば、悲しいつらいことがあるのです。
子供のころ、夏の暑い日の夜に家族みんなで豊島園のプールに行ったことがありました。その日は、塾も休ませてもらえたりして、すごく楽しかったのです。
こんな日が毎日続いたら本当にいいのにと子供心に真剣に思ったのを覚えています。でも結局記憶のある限りは、それはたった一回しか実現しませんでした。
年頃になって異性に興味が出てきたときには、どうして世の中には可愛い子とそうでない子がいるのだろうかと思ったものです。
すべての異性が綺麗で可愛くてもいいはずなのに、なぜそうはなっていないのかと考えたことがありましたが、これは笑い話にしかならないですね。
いずれにしても、この世界というのはそうやって左のない右というものはないし、下のない上というものを作る事は不可能だということなのです。
私たちの心にとっては、暖かい愛の心、愛の行為を誰もが望んでいるのですが、この世界は愛だけではなくて憎悪や恐怖、そして罪悪感もたっぷりとあるのです。
それはきっと、私たちが望んでいることと本当に必要であることとは違うということかもしれません。そして、そのことは私たちのレベルでは理解できないのです。
大切なことは、嬉しいことや愛に溢れることばかりが起こるわけではないと認めることです。常に光があれば闇があるということです。
そして、どちらもできるだけ拒絶するのではなくて、受け止めることです。私たちは所詮、生かされているのであって、起きることに明け渡すことができれば、きっと深い心の平安を得ることもできるはずなのです。