ずっと以前にまだ会社員だったころ、その職場が高層ビルの中にオフィスがあったのですが、確か35階くらいだったと記憶していますが、そういう場所で仕事をしている時がありました。
とても見晴らしがよくて、入社して間もない頃にはこんなすばらしい景色のところで毎日仕事ができるなんて幸運だな、くらいに思っていました。
ただ、人間ていうのはすぐに慣れてしまうもので、職場の人の誰も外の景色のことなど言わないし、自分も全く興味がなくなってしまっていました。
そんなある日、仕事のことから頭が離れてふとこう思ったのです。自分は今、地上百数十メートルの高いところにいる。
このビルが全部透明なものでできていたら、さぞ怖いだろうなと。元々高いところはあまり得意なほうではないのですが、そうイメージした途端に何だか椅子に腰掛けていられないような、床に這いつくばってしまいたいくらい危険な感覚になってしまったのです。
自分でもそんな馬鹿なとは思うのですが、その恐怖の感覚からどうしても逃げることができなくなって、ある場所の一点をじっと見つめることで何とかその場をしのいだと思います。
気持ちが落ち着いてきてから、もう二度とさきほどのような感覚になりたくないと思って、夢中で仕事の方に意識を持って行ったのです。
そんなことになったのは、後にも先にもその時のたった一度だけだったのですが、自分としては全く意味もなく本当に唐突に恐怖を経験したわけです。
今思い返すと、その時は仕事のストレスで心が病んでいたのだろうと思うのです。理由はともかく、人間というものは、特別何もなくても恐怖体験をすることが可能だというのを思い知ったのです。
恐怖だけではなく、不安や喜び、実はありとあらゆる感情を自分次第で作り出すことができるということです。それなら、出来る限り気持ちのいい自分を作り出したいものですね。