今から30年も前のことですが、私が会社員だったころ、その会社では最先端?とも言われる人工知能(AI)について、盛んに研究していました。
と言っても、その頃のAIは名ばかりで、その正体は単なるプログラミング言語だったのです。これでは未来はないなと思ったのを憶えています。
あれから、知らぬうちにAIの分野は飛躍的な進歩を遂げていたのですね。とうとう、囲碁の世界王者を負かすコンピューターが出現してしまったようで…。
長い間、コンピューターがどれほど進化しても、決して人間のような心を持つことも意識を持つこともできるはずがないと思っていました。
ところが、この5~10年くらいのうちに、私自身が持っていた人間についての認識が変化してしまったために、AIについての見方にも変化が起きたのです。
というのも、そもそも人間が特別な存在であるという思い込みがなくなってしまったのです。今や、脳科学の世界では常識ですが、人間には自由意志というものがありません。
ある人が人間のことを、「肉体精神機構」と呼んでいるのを知って、思わずなるほどと感じたものです。その意味は、私たち人間には魂などというものはないということ。
自律的な存在のように見えてはいるのですが、本当は肉体と精神が合体したメカニズムであるということです。つまり、思考と感情と気分を持ったロボットだということ。
先日も書きましたが、人間には意識があるという表現は誤解を生むのです。本当は、肉体精神機構である人間の奥には意識が在るということなのです。
純粋な意識は、どんなものの奥にも在るので、人間が特別ということではないのです。ただ、人間だけが、意識の顕在化が他の動物と比べて顕著だということ。
AIの進化によって、知性という観点から人間を特別視することができなくなるだけでなく、意識がAIを媒介として顕在化する日が来ないと誰が断言できるでしょうか?