物語は思考の中でしか存続できない

人生は物語だというときに、何を言いたいのかといえば、人生は実在するものではないということです。

思考は実在の一部だとしても、思考の中身は実在とは何の関係もないものだということです。そして人生はその思考が作り上げた架空のものです。

でも実際に私はこうして毎日生きているし、いろいろな体験をしながら日々人生が進んでいると思っているのですが、その思いこそが思考なのです。

思考を見ようとすると、あっという間に思考はその動きをやめてしまいます。そのときに、日常の一切合切も一緒になって消えてしまうのを見るのです。

自分はこのような人物だというのも消えるし、あれは誰とかこれは何かといった個別的なものがすべて消滅してしまうのです。

そこにはどんな物語性も残っていることができません。なぜなら、物語性は思考の中でしか存続できないからです。

真実はどんな高度な思考を駆使したところで、遥か及ばない未知のもの。思考は把握する対象を必要としますが、真実は対象とはなりえないのです。

こうしたことが少しでも腑に落ちるなら、深刻さが確実に落ちていくことになるのです。深刻さも思考の一部だからです。