私が小学生くらいの頃というのは、周りにごく普通に野良猫や野良犬が結構いたと思います。友達と遊ぶ空き地などには、必ずといっていいくらいにいましたね。
私の記憶では、彼らが人間である自分たちを恐れている様子はまったくなく、いつも特別に意識することもなく同じ空間を共有していた感じがするのです。
今でも鮮明に覚えている一匹の野良猫がいるのですが、彼は片目がつぶれていて閉じたままになっていました。
それを子供心に不憫に思っていたのですが、ある日ふともしかしたら目を開かせたら開くのではないかという分別のない身勝手な思いから、彼の目を強引に指で開いてしまったのです。
そうしたら、その目の中から大量のうみが出てきてびっくりして、そのままにして帰ってきてしまったことがありました。
でも、その野良猫は怒るでもなく、きっと痛かっただろうに、子供の自分を丸ごと許してくれました。今でも本当にごめんなさいと心の中で思っています。
なんで、あんなに穏やかな心を持った猫がいたんだろうと不思議に思います。今であれば、到底考えられないことですよね。もう一つの記憶に残っている話は、野良犬のことです。
やっぱり顔見知りになっている野良犬がいたのですが、彼は前足の片方を怪我していて普通には歩けなかったのです。足首のあたりが異常に曲がってしまっていて、きっと交通事故か何かで大怪我したのでしょうね。
ある時、一緒に遊んでいたときに彼のその怪我している足を思い切り踏んづけてしまったことがあったのです。びっくりして、自分の足をどけたのですが、さすがに彼は痛そうでした。
でも、決して怒らないし、やっぱり子供の自分を彼はそのまま許してくれたんです。こうした経験というのは、もしかしたらとても貴重だったのかもしれないと思います。
時代なのか、何なのか分からないのですが、飼い主のいない一見可愛そうな猫や犬なのに、不釣合いなほど心が穏やかで、やさしかったのです。
彼らのことを思い出すたびに、自分の怒りや傲慢な心を見て、あ~あと思ったりもしますが、彼らが許してくれたことをなるべく見習うことにしたいなと思ったりするのです。