相棒との別離

丸三年とちょっと、毎日欠かさず足代わりに使ってきたクルマを、明日手放すことになりました。主に、お年寄りと小さな子供に人気があった可愛いクルマでした。

これまで乗り継いだクルマは、概ね次のクルマの話題が出たり、もうそろそろ売り飛ばされると言う頃になると、急に調子が良くなったり、あるいはその逆ですねたような具合の悪さを出したりしていたのです。

これは、人に言えば大抵は笑われてしまうのですが、本当の事なのです。それで、今回も次のクルマはどうしようかというのが持ち上がってきたときに、それとなくクルマの反応を見ていたのです。

ところが、まったくこれまでのクルマたちとは違って、完全な無反応なのです。とはいうものの、そのうちにはきっとなんだかんだと言ってくるに違いないと高を括っていたのです。

けれども、今日にいたるまで全く彼は文句一つ言うでもなく、本当に淡々と己の仕事をこなすのみでした。それで、今日仕事が終わって自宅に帰るまでの時間、ずっと彼に言い続けていたのです。

「君はすごいね!」って。身体は小さいのに、何だかとてもしっかりしていて、人に媚びを売って来たり、問題行動を起こして人の気を引こうということもしない。

「人のことを考えない」という、非常に困難なことを彼はいとも簡単にやってのけているのです。ただ自分のすべきことを実直に続けることで人生を生きていく。

まさに彼のような存在に自分もなりたいと思ったのでした。