乞食同然の賢者が貧しい掘っ立て小屋で寝ていると、そこに泥棒が忍び込んできたのです。盗んで行くものが何も無いので、泥棒を可哀想に思って、唯一の持ち物である托鉢用の鉢を渡したのです。
泥棒はびっくりして、実は泥棒家業を辞めたいと思っているのに、どうしても辞めることができないということをその賢者に打ち明けたのです。
すると賢者は、「泥棒を辞めることはない。その代り、泥棒をするなら、全身全霊で泥棒をしなさい。そして、盗むところをしっかりと意識して見ていることだ!」そう言ったのです。
泥棒は、そんなことを言われたことはこれまで一度もなかったので、不思議に思って、それを実行してみたのです。つまり、泥棒をするときは、泥棒をしている自分にいつも意識を向けているということ。
するとどうでしょう?不思議なことに、盗みを働こうとしてみても、どうにもこうにもする気になれないのです。結局、その泥棒は、泥棒家業から足を洗うことができたのです。
これは、聴いた話しなので実話かどうかは定かではありませんが、この話しにはとても大切なことが含まれているのです。それは、意識だけが真の変化を生み出すということ。
何とかして悪癖を治したいと思って、意志の力でそれを治そうと思えば思うほど、うまく行かないものなのです。それは、思考(エゴ)を使うからなのです。
例えば、何とかしてタバコを辞めたいと思って、禁煙の誓いを立てても、すぐにまたタバコに手を出してしまうという経験を多くの人がしているのです。
そんなとき、タバコを辞めようと努力する代わりに、タバコを吸っている自分に常に意識を向け続けることによって、ごく自然とタバコから気持ちが遠ざかっていくのです。
もしもあなたが、何か辞めたいと思っているのに、辞められずにいることがあるなら、是非意識的でいることを試してみることです。
我慢など必要なく、ごく自然と辞めることができて、その効果にびっくりするはずですよ!