親への怒り

確か「毒になる親」という本があって、この本を読んでセラピーに来る気になりましたと、何人ものクライアントさんからお聞きしたことがありました。

私自身はこの本を読んだことがないのですが、大体どんな内容の本なのかは察しがつきます。一般的に言って、100%親に依存して生きている子供にとって、親の言うことは間違いないと思いたいものです。

ところが実際には、その親が親自身を守ることを第一に生きていると、子供は知らず知らずのうちに心を傷つけられて成長してしまうのです。

そうしたことに気づかせてくれるのが、その本なのだろうと思います。だからこそ、子供にとっての毒になってしまう親がいるのだということです。

その昔、あるクライアントさんからどのように育てられたのかを伺っているときに、それは辛かったですねと共感したつもりが、それ以上母のことを悪く言ったら承知しないと怒鳴られたことがありました。

その時にはっきりと分かったことは、その激怒の理由は、本当は母親に対するひどい怒りを抱えているのですが、それに対する強大な罪悪感によってその怒りを隠しているということ。

隠しているからこそ、的を得たことを言われて、母親に対する怒りを私に向けることになったということです。こうしたことはよくあることです。

それだけ、子供というのは自分の親を悪く思いたくないという健気(けなげ)さを持っているのですが、上記の本は親がいかに子供の害になるかということを暴いている本であるために、今まで隠してきた本音が暴れだすのだと思います。

癒しを進めていくときに、必ず親との関係について見ていくことになりますが、親に対する怒りを抱えていない人はきっといないのですが、多くの人がそれを隠そうとするのです。

その怒りを全く正当なものだと認めることが先決です。その上で、その怒りを受け止めて味わって開放することによって、多くの日常的な問題を解決の方向へと向かわせることができるのです。