過去への執着

「過去のことは何一つここまで届かない」 これは奇跡のコースの中に出てくる言葉です。これは、私たちがいかに過去に翻弄されているかということを教えてくれているのです。

私たちが何かを判断したり、誰かを裁いたりすることのすべての基準となるものは、過去において経験したことがその基であるのは間違いないことです。

過去のいやなことを忘れて、あるいはすっかり水に流して、明るい未来に向かって生きていけばいいというのは、如何にもすばらしい考えのように聞こえます。

上記のコースの言葉にも、同じようなニュアンスの意味合いを感じますが、残念なことに誰もが過去は過去と割り切って生きることはできないでいるのです。

誰も現在が過去から切り離されていると思っているわけではないということです。過去からの時間の流れの中に自分はいて、過去からの結果として現在があると信じています。

だからこそ、セッションにおいても、あるいはセミナーなどにおいても、現在だけではなくて過去に焦点を当てて癒しを進めていくことになるのです。

過去が大切だからではなくて、私たちが過去にいつまでも執着しているからこそ、過去を見つめる必要があるのです。

私たちの心の大部分は、過去に生きているといっても間違いではありません。自分を日頃コントロールする強い情動のすべては実は過去に作ってしまったものなのです。

ところで、その過去を握り締めて震えている惨めな自分の思いを、どれだけ見つめて、受け止めてあげれば済むのでしょうか。

これには、きりがないということも知っておく必要があります。大切なことは、冒頭のコースの言葉に戻って、それを受け入れることができるようになることです。

したがって、過去を見つめる作業は、現在が過去からの産物ではないということを信頼することができるようになれば、もう過去を見る必要もなくなるということです。

それまでの間、ご一緒に過去への執着を手放すワークを楽しんで実践していくことにしましょう。それと同時に、常に今この瞬間こそが真実であるということも気づいていくことが大切です。