個人主義の終焉

クライアントさんに、すぐに思いつく信念や信条と言ったら何ですか?と尋ねると、「他人に迷惑をかけないようにする」というのが多くの場合に頂いた答えでした。

勿論こればかりではないのでしょうけれど、この答えがすぐに出されるということは常日頃から頭の中に忘れずにあるということなのでしょう。

私の場合も、長い間この信条を持っていて、生きる中心に置いてあったことを覚えています。この信条が悪いというのでは決してありませんが、もしもこれを第一番に挙げるということになると、問題があると思うのです。

人生が冒険だとすると、この信条はあまりにも消極的過ぎるという印象をまず持ちます。冒険を計画する際には、冒険の内容について考えるのが当然であるからです。

迷惑をかけないようにというのは、善良な生き方であると言えるかもしれませんが、それは明らかに身を守ることを第一に考慮するという姿勢であって、はじめからあまりワクワクするような冒険にはならないと感じてしまいます。

それはきっと退屈な冒険になってしまうはずです。誰にも迷惑さえかけなければ、自分は何をしてもいいというのは、ちょっと聞くと理屈的には合っているように思いますが、実は自分さえよければいいという個人主義的な匂いがします。

従って、「他人に迷惑をかけないようにする」という信条は、実はとても利己的な生き方を示唆するものでもあるということに気づく必要があります。

人間一人生きていれば、気づいていようがいまいが、いずれにしても何らかの迷惑を周りにかけてしまっているということを認めることです。

冒険旅行の始めから自分を防衛することが頭から離れないのであれば、大した冒険にはなりそうもありませんし、それでは本当の満足を得ることは難しいでしょう。

大きく言えば、私たち人類はそろそろこの個人主義の生き方というものを本気で見直す時期に来ているのではないかと思います。

迷惑をかけてしまうことを心配するよりも、どんなワクワクする冒険をしようかということに意識を向けることが大切ですし、それができたらきっと冒険の成果を独り占めしようなどという発想もなくなるはずです。

個人主義に陥らないようにするには、冒険旅行を興味深いものにするためには、どのように心がけたらいいのかということをしっかり考えてみる必要があると思います。