人間である私たちが、他のあらゆる動物と決定的に違うのは自我として生きているという点ですね。
自我だけが一人称としての「私」を持っているのです。これは地球上における生物の進化の過程における画期的な出来事だと思います。
そして自我の発生とともにもう一つの奇跡的なことが起きたのですが、それが意識の目覚めです。
自我を持たない動物は意識が覚醒していない、つまり無意識状態でのみ生存しているのですが、人間だけが自分に意識を向けることが可能となったのです。
ところが残念なことに、ほとんどの人が多くの時間を無意識状態で過ごしているという現実があるのです。
もしかしたら朝目覚めてから夜寝るまでの間の時間に、意識が覚醒している時間なんてほんの数パーセントもないのかもしれません。
しかも私たちが苦しむ本当の原因は、無意識になるからだと気付いている人もまた少ないのです。
あなたが激怒する時、あるいは極端に落ち込んでしまう時、我を忘れて不安に苛まれる時、こうした平静ではいられない時というのは確実に無意識なのです。
逆にあなたがしっかりと意識を内側に向けて、自分自身を見守る状態でいられるなら、我を忘れるということはなくなってしまうのです。
だからいつも出来る限り意識的であるようにと言っているのですね。ただ言うは易しで、実践することは何と難しいことか。
それでも決して忘れないことです。あなたが苦しんでいるなら、それは無意識になっているからだということを。