自我の不思議

もしもあなたに、たった今完全なる満足、とてつもない充足がやってきたとしたらどうなると思いますか?

すぐには想像できないかもしれませんね。私自身もその感覚がはっきりとは分からないというのが正直なところです。

けれども、20年以上にわたって自我を見つめてきた経験からすると、自我が崩壊することは間違いないでしょうね。

自我を支えているマインドの思考群が、一つにまとまっていることができなくなって、溶けていってしまうのです。

それはまるで一滴のインクを水の中に垂らしたような感じで、すぐに水の中に広がってインクは溶けて消えてしまうのです。

なぜそんなことが分かるのかというと、自我が何を頼りに一つのまとまりを維持しているのかを知ったからです。

それは不満、不足感、欠乏感、そういったものがベースにあって、そこからそれを解消しようとして欲望が生まれるのです。

その欲望を原動力として、思考が塊となってマインドの働きを継続しているのです。欲望は自我の死活問題です。

だから完全なる充足は、自我にとっては命取りになるというわけです。自我という個人とは不思議なものですね。

いつだって満たされたいという不満を抱えていながら、万が一満たされたなら消えていく運命にあるのですから。