小学一年の時に、盲腸の手術をしたことがあります。正式には虫垂炎と言うのでしょうが、昔は単に盲腸と呼んでいました。
術後、医者か看護師の誰かに摘出した盲腸を見せてもらったのですが、それがピンク色をしたいかにも健康そうなマカロニのようだったのを覚えています。
病室のベッドで近くに母親が付き添っていてくれるのですが、彼女が心配そうにこちらを見ているのが耐えられずに、こっちを見るな!と怒鳴っていたのを覚えています。
どう言うわけかあの眼差しで見られると、切った右下腹部のあたりが疼くのです。そんな馬鹿なことがあるかと思われるでしょうが、本当なのです。
それで母親はどうしたらいいか途方に暮れて、私に背を向けて窓の外を見ていたように記憶しています。
申し訳ないことをしたなとその後何度となく思い出しては考えていましたね。あのこっちを見るな!のもっと奥には、優しい眼差しで見て欲しいがあったのではと思うのです。
子供心に心配されたくないと言う気持ちが強く働いて、本当は見て欲しいという思いを隠していたように思います。
マインドというのは面倒臭いものですね。本当に欲しいものが願っても願っても手に入らないとなると、そんなものもういらないという嘘の思いをでっちあげるのです。
要するにそうやって防衛するわけです。どれほど望んでも抱きしめてもらえないとなったら、抱きしめて欲しくないという嘘をでっちあげるのです。
そうやってどうすることもできない苦しみから解放されようとするわけです。見て欲しいのに、見るなというのも同じだったのかも知れません。
そう言ったずっとひた隠しにしてきた本当の気持ちに気づくなら、人は生きている感覚が根本から変わってしまうかも知れません。
そんな隠された本音があるなら、きっと癒しの過程で自ずと気づくことになるのだと思いますね。