子供の頃に次のようなことを経験したことがありました。暗い夜道を一人で歩いていると、なんだか背後に不穏な違和感を感じ出して、急に怖くなってきたのです。
そのときに、立ち止まって後ろを振り返って確認する勇気がないため、思い切って急に走り出したら、さっきよりもものすごい恐怖を感じてしまって無我夢中で家まで走り続けたのでした。
みなさんはこういった経験をしたことはないでしょうか?この体験には、恐怖というものの特性が現れています。
それは簡単に言うと、恐怖は逃げ出せば減るどころか増すことになるということです。自分が逃げているという事実を体感すると、思い切り逃げていればいるほどそれだけ怖いのだとの認識をより強く持ってしまうことになるのです。
つまり、怖いから逃げるという行為に及ぶと考えるのが通常の原因と結果の関係ですが、逃げるという行為によって、逆に恐怖が誘導されて出てくるということです。
上の例では、元々怖いと感じていたところに、逃げるという行為によって、更に恐怖を上乗せしてしまったということです。
ところが、勇気を持って恐怖と向き合おうとすると、その瞬間は確かに怖いのですが次第に恐怖は少なくなる可能性が高いのです。
なぜなら、恐怖の要素として得体が知れないとか理解できないということが含まれているからなのです。
分からない状態はそれだけで怖いのです。幽霊などが恐怖を感じさせるのもそのためなのです。ですから、向き合ってしまうと対象を理解することになるので恐怖が減ってくれるのです。
この原理は心の中についても同じことが言えます。恐怖から逃げてそれを心の奥に抑圧している間はその恐怖は減ることはありません。
勇気を持って抑圧しているものと向き合ってしまうと、その恐怖の正体がばれてしまうので怖さは半減してしまうということです。
心を癒していくとは恐怖を手放していくということですので、どうしてもどこかでそれと向き合う必要があるということなのです。
気が重くなるかもしれませんが、しかし向き合ってしまえば実は逃げてるときよりも恐怖は減ってくれるというありがたい事実があるということです。