存在の価値には違いがない

お昼少し前の時間に、ガラガラの電車の中で席に腰かけて、その駅を出発するまでの数分を待っていたときのことです。腰の曲がった高齢の女性と盲導犬が車内に入ってきたのです。

以前にも何度か見たことがある光景なのですが、実はそれは車内が空いている時間帯を利用して、訓練をしているところなのですね。盲導犬の訓練ではなくて、利用者さんの方の訓練です。

脇には訓練士さんも一緒にいるのですが、きっと利用者さんが盲導犬と上手にコミュニケーションをするための訓練なのです。

犬の方は、しっかりと訓練を受けていつでも本番を迎えることができる状態にあるのだろうと分かるのです。その健気な態度には本当に驚かされます。

ところが、利用者さんはまだ慣れていないからなのか、余裕がないような感じで、私が見た感じでは犬に対しての敬意とか優しさのようなものが欠けているのではと感じたのです。

利用者さんが座席に座るやいなや、犬はその女性の足元と座席の狭いすき間にすかさず身をおいて、少しでも小さくなっていようとして伏せているのです。

それなのに、位置が気に入らないのか、利用者さんが犬のお尻をぐいぐい手で押すものだから、犬はどうしたらいいのか困った表情になっていて…。

一瞬、涙が出そうになったので目を背けてしまったのですが、人間と犬を比べることは勿論意味のないことですが、何だかその犬の賢さが異常に目立っていましたね。

きっと盲導犬になった犬は、ストレスが非常に多い人生を生きることになるのでしょう。人間様の役に立つのなら、犬も本望だろうとは、とても思えない瞬間でした。

人間だろうが、ほかの動物であろうが、何であれ存在としての価値にはどんな違いもないのですから。

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