セラピストは待つ

「俺は俺自身のことを誰よりも分かっている!」とどこかのおじさんが豪語しているのを聞いたことがあるような気がしますね。みなさんはどうですか?

それは物凄く笑えるのですが、気持ちはよく理解できます。自分は人が知らない自分のことを誰よりも知っていると感じているからです。

実際、朝から晩まで生まれてこのかたずっと自分と一緒に生きてきたわけですから、他人などよりも自分のことをよっぽど熟知しているのだと。

また確かに誰も知らない自分だけの秘密があるなら、そのことは自分が一番よく知っているのは当然のことです。

けれども、自分のことは自分が一番よく分かっていないという面があるのも皮肉なことに事実なのです。それはなぜでしょうか?

理由はいたって簡単。自分では自分の都合の悪いことからいくらでも目を背けていられるからですが、他人はその都合の悪さを持っていないのでズバッとそのまま見てしまうからです。

その上、セラピストというのはどんなクライアントさんであれ、利害関係が一切ないので、プロの目はクライアントさんの内面を細かく見通すことができるのです。

どのようにして癒されていくのかを、およそ見渡すこともできるのですが、それはクライアントさんの協力なくしては全く意味をなさないのも事実。

そんな時、セラピストは無理強いしてもいいことはないと知っているので、ただひたすら待つことになるのです。待つことも仕事の一つですね。