人生は物語

クライアントさんというのは、何か困った問題を抱えていて、どうしたらいいのか分からないからこそ、セッションに来られるわけです。

だから、これはどのように対処したらいいのか?あれはどうすれば一番いい解決につながるのか?ということを相談したいのですね。

ところが、セラピストというのはそうした具体的な相談にはのれないのです。それは何故なのかをどう説明したらいいのでしょうか?

一つは体験から分かっていることなのですが、私がこうしたらいいのではないですか、と助言めいたことをしても、それが的を射た言葉だったと思えることがないのです。

そしてもっと根本的なことは、そうした具体的な助言というのは、結局クライアントさんが演じている物語の中に私も一緒に入ってしまうことになるということ。

端的に言って、セラピストの仕事の一つは、クライアントさんが自らの人生を一つの物語として見ることができるように促すことなのです。

ということは、例えばクライアントさんがこの人と結婚すべきか、あるいは別れた方がいいのか、という分岐点にいるときに、その選択を私がすれば完全に物語に加担することになってしまうのです。

選択が正しいとか間違っていると言ったことはないということ。どちらにしても、その物語の中で気づきを得ることができれば万々歳なわけですから。

テレビドラマや映画を観れば、そこにはあらゆる物語が展開されていて、その一つひとつが正しいとか間違っているなどとは思わないのと同じこと。

どのような物語であれ、それを見ることで気づきを得られたなら成功だし、何も気付けなければそれはそれで次の物語を待てばいいのですね。