苦悩の根源

人類が月へ初めて到達してからもう40年前後経っていますね。その後も人類が宇宙に向けて進化を続けているのは誰でも承知していることです。

いずれは一般人でもロケットに乗って宇宙に出かけられるようになるはずです。ここで、ちょっと想像してみて欲しいことがあります。

それは一人乗りの宇宙船が故障して永遠に宇宙をさまようことになったらというものです。さまようと言っても、動力がなくなれば実際には一定の速度で直線的にどこかの方向に進み続けることになります。

宇宙空間には空気も雨もありませんから、宇宙船が錆びてしまったり、風化してぼろぼろになることはありません。

勿論実際にはその代わりに、隕石やら星などとぶつかってしまうかもしれませんが、そういったことは考えに入れずに永遠に宇宙空間を漂うと言う想定をするのです。

自分は生命維持装置につなげられており、食事も排泄もせずにずっと生き続けられると知っているとしましょう。

つまり、この状態とは完全なる孤独な環境の中で、絶対に永遠に死なずに生き続けられるという設定です。生命体として永久に生きていける環境であると同時に、気晴らしなどは一切できないというものですね。

現実の生活があまりにも辛すぎて生きては行けないと思っている人にとっては、もしかするとそんな宇宙船の中での永遠の孤独でも逃げ場として受け入れるかもしれません。

ですが、通常であればそんな環境では発狂してしまいそうだということが分かります。将来の不安もないし、お金がなくなって飢え死にする恐怖もないし、病気もないし、肉体的な苦しみもないというのに、なぜそう感じるのでしょうか?

実はこれこそが我々が本質的に抱えている苦悩なのです。私達が持っている本当の苦悩、恐怖とは死ぬことではなく、こうした分離感にあるのです。

誰もがこの分離感はとても堪えがたいものであると知っているため、それを死の恐怖に摩り替えておいて、しかもそれを抑圧して分からないようにするという念の入れようなのです。

ですから、この苦悩の根源からは相当に遠い意識で生きているのです。しかし、ここで想像したようなことをじっくり感じてみることで、この苦悩の根源におぼろげながらも気がつくことができます。

これこそが、すべては一つという愛の想念の対極にある苦悩です。私達は恋人に捨てられたから苦しいのではなく、お金持ちになって優雅な暮らしができるから幸せなのでもありません。

本当の苦悩は分離からくる愛の欠如であり、本当の幸せは愛への帰還なのです。それ以外のことはすべてまやかしだということに気づくことですね。