不確かな記憶

日々のセッションでは、クライアントさんの心の奥に抑圧された幼いころの様々な感情や思い違いによる苦悩などに気づいていただくために催眠療法などを試みます。

その場合、クライアントさんによって幼い自分のその時の記憶を明確に覚えていることもあれば、あやふやではっきりしないような事もあります。

また、思い出すことができなくて、ただ自分の中にあるイメージのような類のものだけしか出てこないということもあります。

昔に見たことがある写真のワンシーンが思い出されてみたり、自分では辻褄が合わないような思い出し方をすることもかなりあるのです。

例えば、思い出しながら、この年齢の自分はこの家にはまだ引っ越してきてないはずなのだけどとか、自分と兄弟などの年齢の差が現実とは合わないということもあります。

生まれてすぐの赤ちゃんのときの記憶が出てきたとしても、もしかするといつか親などから聞いたことのある内容が映像化されて記憶としてしまわれただけのものかもしれません。

実は人間の記憶というのは私達が通常考えているよりもかなりいい加減なものだということです。それなら、思い出したことを元にしてセッションをする意味がないのではないかと思われるかもしれません。

しかし、記憶の正確さというものはセラピーにおいてはあまり重要なことではないのです。言葉を変えると、実際に起きた事かどうかということには大して意味はないのです。

もしも全く事実としては起きてなかったことであったとしても、本人の心の中に記憶として印象深くそのことが残っていれば、それは癒しの対象になるということです。

ですから、セラピーはクライアントさんの記憶を頼りに進めていくようでいて、実はそれが事実と符合するかどうかはどうでもいいのです。

だからこそ、不確かな記憶を使っても問題なく癒しを行っていくことができるのです。ご本人の妄想であっても、単なるイメージであってもどんなものでもそれが本人の心から発生したものであれば、正しい記憶と同じように癒しのネタとして使うことができるのです。

ですので、今後セッションを受けてみようかと思われている方で、自分の記憶に自信がなくてどうしようかと思っていらっしゃる場合は、何も気にせずにセッションにいらして下さいね。