思考を休めて、「何もなさ」の中で憩う

心理的自己防衛というのは、具体的に言えば「過去の経験から学んだことを基にして、来るべき未来に備えよう」とすることです。

動物全般が持っている防衛本能とは一線を画しています。なぜなら、防衛本能は、その瞬間、まさに今危険かどうかが鍵なのに対して、心理的自己防衛は過去と未来においての話しだからです。

そして、過去と未来ということは、まさに思考の範疇であるというわけです。人間だけが日夜励んでいる心理的自己防衛とは、そういうものなのです。

ということから、非常に大切なことを知ることができます。それは、苦しみの根源である心理的自己防衛を緩めていくためには、思考を緩めていけばいいということが分かります。

思考が緩むか、停止してしまえば、私たちに過去も未来もなくなるばかりか、守るべき「自分」という思考の産物さえもなくなってしまいます。

心理的自己防衛が、抑圧して見ないように仕向ける否定的な感情にしても、それを作り出すのは思考なのです。

したがって、思考の外にいることさえできれば、そうした都合の悪い感情からも開放されることができるのです。

オーバーな表現をすれば、日本中の人たちが、あるいは世界中の大勢の人々が、自分の思考にとらわれないようになったら、世界は大きく変わってしまうでしょうね。

私自身も含めて、一人でも多くの人たちが、過去と未来ばかりにエネルギーを費やす思考を時々休めて、「何もなさ」の中で憩うことを覚えたら、暖かな思いやりの気持ちが巷にあふれるようになると思います。