どんな望みも実在しない

思考の中で暮らしている私たちにとって、空間的な広がりがあるだけでなく、時間的な広がりをも感じているのです。それが、過去への広がりと未来への広がりです。

けれども、それは単に感じているだけであって、冷静に理性をもって見つめれば、実在しているのは今この瞬間だけだということも分かっているのです。

この矛盾に目をつぶって、過去も未来も自分とともにあるかのようにして生きているのですが、それこそが物語という思考による創作物なのです。

どんな望みも過去から生まれるしかないし、それは未来に託す以外の方法はないのですが、どちらも実在してはいません。実在するのは、何度も言うように今この瞬間だけなのです。

今この瞬間においては、どんな望みも抱くことはできません。ただ、この瞬間を味わい、それを楽しむことしかできないということに気づくことです。

私たちが日々していることと言えば、思考が創った物語の中で、望みを叶えようと一喜一憂し続けているということ。実在しないものとともにあって、それを楽しむ夢想者のようなものです。

目を覚ますことができるなら、どんな物語も消えてしまい、残るのはあるがままの実在の姿のみ。物語の中で暮らしていた偽物の私やあなたも同時に消えていくでしょう。

言葉も消えて、むき出しの実在だけがただ在るのでしょうね。

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