ヤマアラシのジレンマ

自我というのは他者との関係性の中にのみ存在できるもの。現実に相手が近くにいなくても、思考によって関係性を作り出すこともできるのです。

だからこそ自我は、たとえ独りでいたとしてもすぐに消えたりはしないのです。ではなぜ自我は、それほどまでに他者との関係性を必要とするのか?

それは自我の生い立ちを見てみればすぐに理解できることなのです。自我が作られていく過程においては、他者の存在がどうしても必要なのです。

というよりも、周囲にどんな人がいたかということによって自我が生み出されるのですから、言ってみれば自我は他者の存在の証なのです。

そうやって生まれた自我なので、他者との関係性があるときにだけ活躍することになるわけですが、その反面人と一緒にいると疲弊するという自我があるのも確かなこと。

そのような自我は、独りでいると寂しいので誰かとの関係性を作りたいと願うのですが、いざ一緒にいると気疲れして疲弊してしまい、結果として独りの空間に逃げ帰るのです。

こうした状態をヤマアラシのジレンマと呼びます。ヤマアラシというのは、あの身体中トゲトゲのある動物ですね。

寂しいから他のヤマアラシとくっついていたいのですが、いざくっついてしまうとあのトゲが互いに痛くて離れたくなるという、ジレンマがあるということです。

我々人間の場合に起きるこうしたジレンマは、自我による過度の自己防衛が原因なのです。その防衛が過度になってしまった原因を探って、それを小さくしていくのが癒しということですね。