いつの時代にも、そしてどこにでも怖い親というのはいるものですね。その怖さというのは、勿論その親が怒っている時のことですが、まるで人格が変わってしまったかのような怒り方をするのです。
幼い子供は、ただでさえビクついているはずなのに、いつもは頼りになっていたはずの親が激変してしまうのですから、その恐怖感というのは筆舌に尽くしがたいはずなのです。
そういう親に限って、過去に自分が子供にしてきた虐待のことを、ほとんど覚えていないのが通例なのです。あれほどひどいことをしていながら、覚えていないなんて、そんな都合のいいことがあっていいのだろうかと思うほどです。
けれども、本人は本当に覚えていないのです。なぜなら、実際に人格が入れ替わるようなことが起きているからです。怒りのモードに入ったときには、その親のインナーチャイルドの怒りに乗っ取られている状態だからです。
勿論、子供はそういうひどい怒られ方を繰り返すうちに、親のことを信頼することができなくなってしまいます。それは当然のことですね。
ごく普通の穏やかな親の状態であっても、いつ激変するか分からないのですから、どこかでいつも気を配っていなければならなくなってしまいます。
そうすると、親の顔色をいつも注意深く見ている子供が出来上がってしまうのです。子供は、親といて安心させてもらえるはずなのに、常に不安な状態になってしまいます。
その不安感は、大人になっても本人の心の奥底にこびりついて、何の理由もないはずなのに、生きていることそれ自体が不安だというように感じてしまうようになるのです。
激しい恐怖は、子供が怒りをきちっと感じることを妨害してしまいます。結果として、怖い親に育てられた子供は、知らず知らずのうちに、大量の怒りを溜めてしまうことになるのです。
その怒りは、大人になってから身近な人へと向かうことになります。もしもそれが自分の子供であったなら、自分がされてきたことと全く同じことを、今度は自分が子供にすることになるのです。
そうやって、世代間チェーンが続いていくのです。勿論どんな場合でも、そうした世代間チェーンが起きてしまうということではありませんが、その可能性が高くなるということです。
誰かが勇気を持って、自らの癒しをすることでそのチェーンをぶった切ることができたなら、自分より下の世代は救われることになりますね。