苦しみを嫌悪しない

動物には、私たち人間のような精神的な苦しみというものがありません。彼らには、痛みはあるのですがそれを思い悩む意識がないからです。

それはある意味幸せなことですが、残念なことに自分には苦しみがなくて幸せだという自覚も同時にないのです。それが、無意識で生きているということです。

私たち人間は、動物に比べてほんの少し意識的な部分を持っているため、その分だけ悩み苦しむということが起きてしまったのです。これは、当然の結果なのです。

人間として生まれて生きて、苦悩がないならその人は動物に近い状態というしかありません。動物も人間の赤ちゃんも無邪気ではあるけれど、何の深みもないのです。

それが無意識というものです。意識的であるということは、この痛みを何とかしたいと思うために、必ず心理的な苦しみを伴うことになるのです。

だから、苦しむことを嫌悪してはいけません。楽しいだけの人生では、大切な気づきもやってこないのですから。苦しんでいる人は、それなりの美しさというものをまとっています。

発狂してしまえば、動物へと逆戻りするだけですが、苦しみから逃げずに自分に正直になっているクライアントさんの姿は本当に感動的ですらあります。

それほど愛おしい姿というものは、他にないかもしれません。そして、一つの苦しみが永遠に続くということも決してありません。この世界は絶えず流転しているのですから。

その流れの中で、自分の怒りや罪悪感と向き合い、決して逃げず、ひたすら正直でいることを通して、人は益々意識的な生を生きて行くことになるのです。

そして、いずれは常に意識的でいることができるようになるのでしょう。その時には、ようやく思い悩むということからも解放されるはずです。

それは、苦しみを知らない動物のようであると同時に、100%の意識そのものであるということが起きるのです。私たちの誰もがそうなるためにこの生を生きているのですから。