ストーリーなしで感情を味わう

セラピストというのは、セラピーを通してクライアントさんの感情を主に扱う職業です。主にというのは、語弊があるかもしれません。100%と言って間違いないです。

それもいわゆる否定的な感情ばかりを見ることになります。それだけ、人は自分自身の否定的な感情に翻弄されてしまっているということです。

場合によっては、そうした感情があまりにも辛いので、感情を感じない人間になりたいなどと本気で思ってしまうようになることもあります。

しかし、本当に辛い理由は、感情自体ではなくて、それから逃れようとすることが原因なのだということはあまり気づかれていないのです。

怒りや恐怖、悲しみやさびしさなどの感情は確かに快いものではありませんが、それから逃げている限り、それは必ず追っかけてくるのです。

それはもう必ずです。ですから、ごまかしていられるうちはいいですが、いつかは追いつかれて、苦しみの中へ突き落とされてしまうかもしれません。

セラピストは、感情というものは抑圧してもぶつけても、どちらもなくならないと伝えます。そして、勇気を持って、それと対峙することから始めるように仕向けます。

そして、心の中だけでその感情をただあるがままの感情として、感じきるのです。それはどういうことかと言うと、感情には必ず何らかのストーリーが付着しています。

そのストーリーと一体となって感情があがってくるわけですが、そのストーリーと一緒に感情を味わってしまうと、感情に直接触れることができなくなってしまうのです。

例えば、怒りという感情があったとして、それはストーリーと共に捻じ曲げられて憎しみという形となって感じられることになります。

憎しみをいくら味わったところで、開放されないのは、直接の感情である怒りを味わえなくなってしまうからです。

どんな感情もストーリーを抜いて感じきることができるのです。それこそが、本当に感情そのものを味わってそれを溶かすということになるわけです。

そうやって、否定的な感情を通り抜けたとき、そこにはとても暖かな太陽のような心の状態が待っていてくれるはずです。

どんな感情も、元を正せば自分自身の心が作り出した罠でしかありません。それは個人としての私という想念を存続させるための防波堤なのです。

したがって、幾重にも折り重なった感情の罠を潜り抜けて、本当の本当のあなたに出会うことができたときには、自分を守る必要のない本当の平安に満ちた自己を見つけることができるのです。

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