苦悩の原因

とても沢山のクライアントさんがそれこそ様々な問題を抱えて、それを何とか解決しようと決意して、勇気を持ってセッションに来て下さるのです。

その勇気を私はとてもすばらしいと思わずにはいられません。なぜなら、見ず知らずの私ごときにみずからそれを暴露しなければならないのですから。

でもその勇気は、すぐにではないにせよ、いつか必ず報われるときが来るものです。人は向き合っただけのことはあるということですね。

お話しをお聞きしたり、外見や状態を見させていただいただけでは、そのクライアントさんの本当の苦悩や痛みを推し量ることなど、決してできません。

私は、まつ毛が目の中に入ることがよくあるのですが、自覚としてはとても辛くて、うっとうしくて、痛くて何とも我慢がならない状態になります。

仕方なく、洗面所の鏡に向かってしばし奮闘した結果、そのまつ毛を取ることができたときに、実はびっくりしてしまうのです。

それは、目の下側に生えていた、本当に産毛のような細くて小さなまつ毛だったりするわけで、こんなに小さなやっと目で確認できるくらいのモノにこれほど翻弄されていたとは。

あれだけ自分にとっては重大なことだったはずなのに、その原因を見つけることができたら客観的にはくだらない小さなまつ毛だったわけです。

こうしたことと同じようにして、クライアントさんの苦悩の原因を探っていくと、外側からみたらそれほど大したことではないと思えるようなことでも、ご本人にとっては大変な苦しみという結果になっていることがあるのです。

人とはそういうものです。原因がどんなものであるにせよ、結果が本人にとってどのようなものとして知覚されるかで、その苦しみが決まるということです。

だからこそ、セラピストは安易にクライアントさんの苦悩を判断することはできないのです。誰もが固有の苦しみと戦っている、そのことを真正面から受け止めて差し上げる必要があるのです。

そして、こうしたことは普段の何気ない人間関係についても同じことが言えると思います。相手の気持ちを判断する前に、十分に相手の苦悩や痛みを受け止めることを心がけられるといいと思います。