「ノー」が自我の求心力

自我が健全に成長していくために絶対に必要なことは、「ノー」を言うことなのです。「ノー」が自分をひとまとまりにしておく求心力になるのです。

元々自我というのは、生育環境の寄せ集めによって出来ているのですが、ただかき集めただけのものは放置しておけばすぐにバラバラになってしまうのです。

それを避けるために、「ノー」を繰り返し、360度全方位に向けて放ち続ける必要があるということです。

それはちょうど日本の時代劇のチャンバラのシーンに似たようなものを見ることができます。大勢の敵に囲まれた数人の武士をイメージしてください。

その武士たちがバラバラに戦っていてはいずれはやられてしまいます。そこで彼らは仲間同士で背中をくっつけ合って、その周囲にいる敵たちと対峙するのです。

その光景が自我が「ノー」を放ち続けて、中心に固まる様子に似ているように思うのです。イメージできたでしょうか?

その逆に、自我の発達段階で思う存分に「ノー」を連発することを阻止されてしまったなら、他人との境界が曖昧なままになってしまうのです。

境界が曖昧なまま成長してしまった自我は、他人から侵略されやすいし、他人からの影響が大き過ぎてとても生きづらくなってしまうはずです。

そういった自覚が少しでもあるなら、日頃から「ノー」を言う訓練をするとともに、「ノー」が言えなかった過去と向き合って癒しを進めていくことがとても大切だと思いますね。