いつまでも浮かばれない心の部分

生まれ持った気質が過度に敏感であるとか、生育環境が本人にとってかなり苛酷なものであったりした場合に、成長するにつれて心のバランスが崩れてしまうことがあります。

そうすると、心の機能をまんべんなく使うことができなくなってしまうために、非常に偏った考え方をするようになることがあります。

過度に人を恐れるようになってみたり、自分で作ったルールを守ることに全エネルギーを注ぎ込むような生き方をしたりするのです。

そうなると、心の中は小さな部分に分裂してしまい、それぞれが互いに意志の疎通をしなくなってしまうのです。

そのうちのどれか一つが、その他を圧倒するような力を持っている場合には、偏っているとはいえ、本人はある意味安定の状態を続けることができます。

そしてそれが本人にとっては、本当の自分であるかのような錯覚に陥るのです。それは、本人だけでなく、周りの人からもそのような人だと勘違いされるのです。

けれども、そうした心の不均衡というのはいつかは崩れることになります。なぜなら、抑圧されていた心の部分が耐え切れなくなって、表面化するときが必ずやってくるからです。

それは本人にとっては、自分の中にこんな面があったのかと、驚いてしまうことになるかもしれませんし、困ったことになったと思うかもしれません。

しかし、セラピストの目からすれば、それは大きなチャンスが到来したのだと映ります。もしも、突然自分のことがコントロールできなくなる時があったり、自分の言動を理性で説明できないことが頻発するなら、そのチャンスを逃さないことです。

長い間の葛藤によって、張り詰めていた心が何とかして元通りになろうとしているのですから。自分の心の反応を否定することなく、静かに見守ることです。

人の心の中には、まだまだ埋もれたままになっている、浮かばれない部分が残っているものです。それが当然だと知っていると、慌てずに済みます。

どうしても、自分独りでは不安であるというのでしたら、セラピストなどの専門家に力を借りることを考えてもいいと思います。