執着という代替願望

癒しの中で一般的によく言われることに、「執着を手放す」というのがありますね。何かに強く執着していると、非常に苦悩することになるからです。

ではなぜ、執着というものがそもそも心の中に生まれるのかと言えば、それはもちろん自分を守るためです。

自分を守るために必要と思われるものを、何とかして手に入れたいという強い欲望、あるいはこれを喪失してしまったら自分を守れなくなると思うものを無くさないための執念を執着と呼ぶのです。

けれども、自分を守るために執着するはずが、結果としてそれが自分を苦しめているのですが、そのことにたとえ気づいたとしても簡単には執着を手放すことができないのも事実です。

それは、執着のメカニズムについて少し詳しく考察することで説明することができます。単にあれが欲しい、これが必要という程度の欲求では、執着とは呼びません。

そうした普通の欲求が執着へと変化するためには、まず初めに欲望を抑圧するという手順が必要なのです。

たとえば、幼いころに純粋に○○が欲しいとか、こうして欲しいといった欲望があったとして、それが何かの理由で絶対に叶うことがないと思い込んだとします。

そうすると、その欲望を自覚している限りその子は苦しむことになります。その苦しみから自分を守るために、その正直な気持ちを隠してしまうのです。

これで、一時的にはその苦しみから解放されることになります。確かに自己防衛は成功したかに見えるのです。

けれども、残念ながら、抑圧された欲望というのはその後何かの形となって表面化します。それは、違うものへの欲望として認識されます。

本人は以前抑圧したものが異なるターゲットに対して出てきたのだとは気づきません。それだけではなく、この新たな欲望も満たされることがありません。

なぜなら、それは抑圧された本当の願望の代替品だからです。そのため、いつまでもこの代替願望が満たされないままになるのです。

本人の自覚としては、求めても求めても満たされないという人生のパターンとして繰り返すことになるのです。

こうして、ただの欲望が強烈な欲望、つまり執着へと変化してしまうのです。したがって、執着を手放すためには、最も初期に抑圧した願望と対面する必要があるのです。

現在執着している代替品のことは一旦脇へ置いて、かつて本当に欲しいと願っていた本音を思い出し、本音とともに溜まっている感情をしっかり見てあげることです。

そうやって、心の奥で絡んでしまっていた欲望のロックを解除することができ、強烈な執着は次第に影を潜めていくことになるのです。

もしも、あなたが何かに執着を持っていると感じているのでしたら、それは一体どんな欲望の代替品なのか、じっくり過去を見つめてみるといいと思います。