思考の上手な使い方

私たちの精神活動のほとんどすべてが、思考によって成り立っているということはご存じだと思います。記憶を思い返したり、未来を予想したり、パズルを解いたり、誰かを否定したり…。

多くの人にとって、思考が止まる時などないのだろうと判断してもいいくらいです。勿論、そうした判断も思考によってなされているわけですね。

思考は何も人間だけの専売特許ではありません。犬や猫などの動物であっても、思考を働かせていることは伺い知ることができます。

けれども、動物の思考と私たち人間の思考にはとても大きな差異があるのです。それは、動物の思考はただ周りの状況に反応するために思考が使われるということです。

私たちもそのような思考の使い方はするのですが、それ以外の思考がほとんどだからです。それは、自我によって毎瞬ごとに生み出される思考なのです。

思考ほど、強力なツールは他にありませんが、それは自分が能動的にツールとして思考を利用しているときに限られるのです。逆に思考に操られてしまうと、人生が台無しになってしまうかもしれません。

私たちが思考の主人でいる場合、たとえば将棋のプロが一心不乱に集中して将棋の試合に臨んでいる時、最大限思考を有効活用していると言えます。

けれども、自我が「この試合に勝ったら、自分の名声が高くなる。」という思考を送り込んできて、一たびそれに巻き込まれてしまったなら、試合への集中が途切れて結果に悪影響を与えることになるのです。

最も悪いケースは、悩み事をグルグル考え続けてしまい、こんなことをしていても何も解決しないのにと自覚しながらも、そこなら抜け出せずにいるような時です。

こうしたことは、誰にでも一度や二度経験があるはずです。そんなときにはすかさず、「今自分の頭の中にどんな思考がある?」と質問し、思考を見る立場になることです。

そうすると、一瞬にしてグルグル回転していた思考は力を緩めて静かになってくれます。そんなに簡単に思考から抜け出せるはずがないと思うなら、試してみて下さい。きっとうまくいくはずです。

あなたは、思考の主人でいることが多いですか?それとも、やってくる思考に巻き込まれてしまうことが多いでしょうか?そこのところをよく、見つめて自覚することが必要です。

上手な思考の使い手になれたら、あらゆる思考を貫いてずっとそこにある自分の本質にも気づくことができるかもしれませんよ。