欲望にいいも悪いもない

クライアントさんも含めて、私の知人にはいわゆる「スピリチュアル」が好きという人が大勢います。といっても、この「スピリチュアル」というのをどう定義すればいいか、イマイチ曖昧なんですが…。

何か精神的なもの、あるいは本屋さんなどでは「精神世界」などという言葉で関連する書物が陳列されていたりしますね。何となくニュアンスは伝わります。

ところで、この世界でお金儲けや名声、地位などを求めて生きるよりも、精神性の高さを求める方がレベルが高い、あるいはより進化した人間の姿だと思い込んでいる人がたくさんいるようです。

この世界の教えに従って、一生懸命努力して立派な人物になろうとしたものの、いつまでたっても心が満たされないということに気づいて、今度は「スピリチュアル」へと求めるものを変えるのです。

けれども、これって求める対象が変化しただけで、根っこにあるものは同じ。つまり、今のままの自分ではダメなので、何とかして理想とするところまで自分を高めたいという気持ちなのです。

お金持ちになりたいのと、高い精神性を身に着けたいというのとは、本当は何も違いがないのです。後者は一見無欲な感じがするかもしれませんが、欲望を満たそうとしていることに変わりはないのです。

欲望は決して悪いものではありません。ただし、自我を無くして、欲望を取り去りたいなどという願いほど、エゴエゴしい欲望はありません。

物質的な価値観も精神的なそれも、単なる好みの問題であって、殊更「スピリチュアル」などという括りで特別視する必要もないということです。

無欲に生きるということが、崇高なわけでもありません。ただし、心を愛が満たしている時には、自動的にそのような状態になるかもしれませんが、目指すものではないのです。

欲望の中で私が一番好きなもの、それは真実を知りたいという欲求です。この欲求にしたがって、何か練習したりするのは結構楽しいのです。

けれども、忘れてはならないのは、その欲求は小さな子供が飴玉を欲しいと願う気持ちとそれほど違いはないということです。

人はいつまでも欲望を捨て去ることはできませんし、そんなことをする必要もないのです。ただ、その気持ちを今この瞬間の自分が、丸ごと受け止めていればいいのです。