親への不満を正直に見る

子供というものは、必ず親に対して不満を持っているものです。それが、どれほどすばらしい親に育てられようとです。それは、全く別人格の人間どうしが密着して生活しているのですから。

親の考え方や価値観、あるいは信念、信条といった親のワールドと、子供のそれらとは同じであるほうが珍しいくらいです。これは、当然のことですね。

それなのに、クライアントさんによってはごく稀に、ご両親に対してまったく不満がないという認識を持って生活されている場合があるのです。

私は、セッションでそうしたお話しを聞いた瞬間に、何かがおかしいと感じてしまうのです。親がどんなに立派な人物であろうと、理論的にも現実的にも子供は必ず不満があるはずだからです。

そうした場合には、クライアントさんの心の奥に隠された本音の部分、つまり本当は親に対して訴えたい文句がある、ということに気づいてもらわねばなりません。

そして、不満があるという本音を隠さねばならなかった原因を、一生懸命探るのです。勿論、親を否定しようという気持ちは毛頭ありません。誰かを悪者にして、癒しが進むわけではないからです。

心理的な矛盾は必ず見つかるものです。その矛盾をクライアントさんご本人が理性で認められると、そこから気づきがやってきます。ほころびは、大抵あちこちに転がっているものです。

そうやって、ああこんなに自分は愛する両親に不満を抱いていたのだという事実に出会ったときに、本当に癒しがスタートするのです。

子供の頃に隠していた不満は、120%現在の人生へと受け継がれて、何かの形を持って本人の前に立ちはだかってくれるのです。それが、癒しのきっかけを与えてくれるのですから、ありがたいものです。

自分は親に不満を持ってもいいのだということを、腹の底から分かってあげる必要もあります。どれほど、不満があろうと親に対する奥深い愛が損なわれることはないからです。

安心して、心の中にしまっていた親への怒りを味わうことです。癒しが進めば、怒りはどうでもいいことになっていくはずです。その結果、人生に転がっている別の不満さえもが、どうでもいいものへと変貌していくことになるのです。