方向を定めることの大切さ

みなさんもよくご存知の「般若心経」の中の一節に、「色即是空」という言葉がありますね。この色というのは、形あるもの、あらゆる物質のことです。

つまりこの世の森羅万象すべては空(くう)だと言っているのです。空(くう)とは、その言葉どおりに空っぽということです。

何から何まで空っぽであるということを一体どうやって理解することができるのかと疑問視する前に、この「色即是空」と唱えているのは誰かという命題があります。

森羅万象が空(くう)であるなら、そのことを知っているどんなものもいない、空(くう)なはずです。こうした矛盾は、かならず真理の周辺にはついてまわるものなのです。

私たちの誰もが寝ようとすればするほど、寝付けなくなってしまうという経験をしています。それは、寝ようとしている本人の思考が寝入ることを邪魔してしまうからです。

このような矛盾、あるいは逆説的なことはいくらでもあるのです。努力をしないように頑張ってしまったり、緊張しないようにしようと逆に力が入ってしまうなど。

しかし、それでも私たちは努力をしないようにという方向付けを必要としています。緊張しないようにという決意が大切なのです。

寝ようとすればするほど寝付けなくなるのですが、寝る決意をしてパジャマに着替えたり、部屋の電気を暗くして快適な睡眠の準備をすることは大切なことと同じです。

そのことを通して、気持ちを安らかにさせることができ、寝ようとする緊張を解きほぐすことができるわけです。そうやって、知らぬ間に寝なければという思考から開放されるのです。

思考を止めようとすることは、その思考が新たに作られるという矛盾が生じるのですが、それでも思考を止めようとする思考が初めに必要なことは間違いないということです。

そのようにして、いかに矛盾が生じようと、逆説的な事象に出会おうと、方向を定めることがまず必要であることは忘れてはなりません。

自己探求についても同じことが言えます。自己探求の結果は、その自己探求する個人が消滅することであり、これ以上の逆説はないかもしれません。

それでも、その方向性を確定させることがなくてはならないということです。明確な決意をし、その後でその決意した個人が消滅するように導いてもらうということです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です