究極の心の避難所

私は子供の頃から、何となく自分は現実感が乏しいと感じていて、この現実の世界にしっかり自分がいるという感じがしっくりこないというのを持っていました。

こうしたことは、自分に固有のものだろうから、友達や親にもあまり話したことはなかったと思います。でも今は、ごく普通にこのような類の話をするようになりました。

現実感が乏しいからなのか、少し目を閉じて静かにしていると、あっという間に得体の知れないところへ自分が行ってしまいます。

それは他の言葉を使うと、何だかどこか懐かしい感じもしますし、それが幼い子供の頃の感覚をただ思い出しているようでもあるし、そうでもない感じもしてあやふやなのです。

けれども、その感覚は本当にあらゆるものを一瞬にして消滅させてくれるので、とても重宝しています。なぜなら、意味があろうがなかろうが、それも含めてすべてが消えるからです。

惨めな自分も、無残な人生も、理不尽な思いも、悔しい気持ちも、孤独感も、そこへ避難すればことごとくなくなってしまいます。

思考が完全に消えるというわけではないのですが、少しだけ残った思考の残骸が、どこでもない、なにものでもない、あるでもないでもない、というのをうっすら気づいているのです。

こうして言葉にしてみると、かなり危ない感じが漂ってくるようですが、それでもこの先も何があったとしても、この避難所さえあれば自分は大丈夫だという気がするのです。

この心の避難所は誰にでもあるものです。なぜなら、それこそが本当の私たち自身なのですから…。