万能感と絶望感

赤ちゃんは生まれる前も生まれてからも、しばらくの間は至れり尽くせりの毎日を生きています。よほど、特別の事情でもない限りは、宝物のように扱われるのです。

その時の感覚は、万能感とか全能感とか呼ばれるのですが、当然かもしれませんね。なにしろ、人泣きしただけで空腹は満たされるし、退屈したらあやしてもらえるのですから。

オーバーに言えば、望むことは何でも叶えられるわけですから、万能感が出来上がるのも無理はありません。けれども、当然のことながらいつまでもそうした夢のような日々が続くわけではありません。

そうしたある意味女王様(王子様)のような生活は、早晩終わりを遂げることになるわけです。その待遇の落差に、多大に傷つけられてしまう赤ちゃんもいます。

それは、とても敏感で聡明な子の場合です。人一倍感性がするどくて、早熟で万能感の中にいるときに、それを冷静に体験してしまう場合です。

そうした赤ちゃんは、落差の大きさについていけなくて、ひどく惨めな思いをすることになるのです。惨めさとは、それまで当然のこととして期待していた待遇との現実の落差の大きさからやってくるのです。

敏感で聡明な赤ちゃんは、その痛手をいつまでも握りしめてしまいます。その惨めな自分を何ともしてあげることができなくて、自分の無力さにも絶望してしまうのです。

そのやり場のない不満は、大人になってもずっと心の奥に残ってしまっているために、本人はいつまでも理由のない満たされない感覚と戦わなくてはならなくなってしまいます。

こうした心のからくりは、自分独りでは解明することはなかなか難しいのです。自分の中にどんな不満があろうと、それから目を逸らさずに、しっかりと見てあげることです。

そして、不満の中でもがいている過去の自分を丸ごと受け止めてあげるのです。誰かを悪者にしても、決して救われないからです。

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