正しさへのしがみつきをやめる

精神的な癒しを進めていくということは、ある意味、自分自身の内にある正しさを手放していくという果てしない道であるとも言えます。

誰もが自分が作り上げてきた自分の正しさに凝り固まっているからです。それは、何を信じているかということでもあるし、信念体系と表現してもいいのです。

自分の正しさに見切りをつけることは、それほど簡単なことではありません。なにしろ、その正しさに唯一の価値があると思い込んでいるのですから。

本当はそれ自体に価値があるのではなくて、自分を防衛するための強力なツールとして、その正しさに依存し、しがみついているだけなのです。

このしがみつきによって、本質が見えなくなってしまうのです。溺れそうになっている人に、手足をバタつかせるのをやめさえすれば、自然に浮いてくると叫んでも、効果がないのと同じです。

溺れかけている人は、強引に助けてしまうに限ります。けれども、それほどのパニック状態ではないときには、自らの力で、正しさによって自分を幸せにすることができたのかどうかを顧みることは可能です。

繰り返しますが、正しさとは単なる防衛手段でしかないので、それは幸福感とは全く縁のないものだと理解することです。

逆に言えば、正しさから遠ざかればそれだけ、苦しみからも遠ざかることができるのです。ただし、それは必ず痛みを伴うものです。

しかし、その痛みこそ逃げずに、自己防衛せずに見ることができれば、おのずと本質が見えてくるはずです。

自分にとって、なぜ正しさがそれほど大切なのかということを、避けずによくよく見ることです。そうすれば、自分のしがみつきに気がつくことができます。

気がつけば、そこに必ず突破口がやさしく開いて待っていてくれます。正しさを脇に置いてその中に入っていけばいいのです。その先には、先などなかったことに気づくはずです。

行くところなどはどこにもないし、進むべき道もなかったと本当に気づくことができるのではないかと思うのです。