子供はつらいよ

国民的人気映画だった寅さんシリーズを知らない人はまずいないと思いますが、あの映画がスタートする前にはテレビドラマだったということを知っている人はあまりいないのではないでしょうか?

その頃の自分の年齢はよく覚えていないのですが、確か日曜の夜に毎週一時間枠のドラマとして放映していたのを覚えています。すごく面白くて、終わってしまうのが本当に惜しいと思っていました。

きっと当時そう感じていた人が大勢いたのでしょうね、だからこその映画化が実現して、案の定大成功したためにシリーズ化されたのだと思います。

主人公である寅さんの『その日暮らし』っぷりが大好きで、彼の「そこが渡世人の辛いとこよ~」という決め台詞も大好きでした。それが、「男はつらいよ」という題名にも使われているのだと思います。

「男はつらいよ」というのは、男の身勝手な言葉であることは確かですが、「女だってつらいよ」と文句を言う女子を見たことがあまりありません。それだけ、女性の方が大人なのでしょう。

男性でも女性でも、辛い時はつらいというのが本当のところですが、私の本音を言わせてもらえば、「子供はつらいよ」というのが、一番しっくりくるのです。

とかく大人になると、「子供は仕事をしなくていいので楽だ」と安易に決めつけてしまいがちですが、それは違います。子供には子供の辛さがあるのです。

子供は、いつも知ったかぶりした大人たちから理不尽なコントロールを強いられる立場にあるのです。そのことを、どうも成長すると忘れてしまうのかもしれません。

私たちは今が辛いときに、子供の時の楽しかった頃を思い出して、あの頃は本当に無邪気でよかったなあ、あの頃に戻りたいなあ、と思う人もいるかもしれません。

けれども、それは都合のいい記憶ばかりを使っている可能性が高いのです。大人の辛さは、本人が八方塞がりだと思い込んでいるだけで、抜け出す方法はいろいろあるのです。

それに対して、子供の頃の辛さというのは、逃げ出すことがまったく不可能なのです。子供はその絶望感の中にいると思って間違いありません。だからこそ、私は子供の頃のどこの時期にも戻りたくはないとはっきり言えるのです。

もしも、あなたが今の自分の人生が辛いと感じているのでしたら、子供のころは確実にそれ以上辛かった時があったはずなのです。

その頃のことをしっかり思い出して、その頃の子供の自分を救い出してあげることしか、今の辛さから本当に解放される方法はないということに気づくことです。それが癒すということなのです。