精神的な栄養失調

毎日通っているスポーツクラブのサウナで、顔なじみになったオジサマの一人が突然、「オレ、栄養失調なんだよな~」と言ったのです。

周りにいる誰もが一瞬ポカンとしたのですが、それはご本人が胸板の厚い、見るからに体格のいい人だからです。「え、そんなこと言ったら、本当の栄養失調の人が怒りますよ…」と私。

さらに私が、「もしかしたら、奥様や医者に忠告されて、食べたいものを食べたいだけ食べられないから、そんなことを言うんじゃないの?」と言ったのです。

そうしたら本人が、「ここでも、家と同じことを言われちゃう」とぼやきながら、わざと可哀想な自分を装いつつサウナを出ていきました。そこにいたみんなが、おおいに受けたのは間違いありません。

本当は、健康のことなど構わずに好きな食べ物を思う存分食べたいという切実な思いが、心を栄養失調にしてしまっているということを言いたかったのだと思うのです。

そういう満たされない気持ちというのは、誰の心の中にもあるものです。私たちが本当に満たされていないのは、食事のせいではなくて、自分の本質を忘れてしまっているからなのです。

植物を抜き取って、根っこの部分を大地から離してしまえば、その植物は大地から受け取ってきた栄養が来なくなってしまうために、いずれは枯れ果ててしまいます。つまり、死因は栄養失調なのです。

私たちにも同じことが言えるのです。自分のことを一人の個人だと思い込んでしまったために、本質からやってくる栄養が届かない状態にあると感じるのです。

それは、激しい欠乏感をもたらすことになるのです。それを何とか埋めようとして、欲しいと願っているものを手に入れることで満足したことにするのです。

けれども、当然のことですが、本当に足りないのは本質との繋がりなのですから、どんなものを物理的に獲得できても、満たされないわけです。

あなたの心の奥にドシッと鎮座している、精神的な栄養失調を逃げずにしっかりと見据えることです。そして、安心することです。

なぜなら、私たちの誰であれ、一度として引っこ抜かれた植物のようになったことなどないのですから。今までも、そしてこれからもずっと本質そのものであることに気づけばいいのです。