過去も未来も実在したためしはない

この世界は、「何かが起きる」という現象がずっと継続しているわけです。そしてそれは常に今なのです。今以外の時はありません。

どこをどう見回したところで、今この瞬間に何かが起きつつある。そういう世界だということです。

ところが、私たち人間には記憶という能力と、イメージするという能力があるおかげで、現実の世界にはないものを見ることができるのです。

記憶を辿って過去に起きた何かをイメージする(思い出す)ことができます。未来のことも、頭の中でイメージを作り出して、それを見ることができるのです。

過去と未来は、どうやったってこの現実の世界には存在しません。それなのに、私たちの感覚ではそれらがとてつもなくリアルに存在するように感じてしまうのです。

それがなぜなのかなと思っていたのですが、一つの理由が判明しました。それは他人と共有できるからですね。

もしもあなたがこの地球上で一人で生きていたら、昨日こんなことがあった、あんなことがあったと一人で思い出したとしても、それほど続かないはずです。

その記憶はすぐに萎んでしまい、それよりも今目の前で起きていることの方に意識が集中するはずなのです。

ところが、誰かと昨日起きたことを共有することで、話しがはずんでいくわけです。そうやって、今日もあなたの思考があなたを存在しない過去や未来へと誘うのです。

実はこうした能力を身につけたおかげで、ホモサピエンスである我々が地球上を支配するまでに成り上がったのです。

ただし、人間社会が個々人よりも大事にされるあまりに、その能力を使い過ぎることになってしまい、誰もが左脳一辺倒の生き方をするようになってしまったことは問題かもしれません。

人とのコミュニケーションの時には、左脳(言葉)によってそれが成立するのは悪いことではないですが、独りでいる時には左脳を休ませて、ありもしない過去や未来から離れること。

独りでいるときに、余計な思考に振り回されていないか、よくよく注意して監視している必要があるということですね。