幼いころに喪失したダイレクト感を取り戻す

今までにも何度か書いたことがあったと思うのですが、私は子供の頃のあるときに、生きていることのダイレクト感を喪失したと感じた経験があります。

他にもっといい表現があればいいのですが、とにかく何か昨日までと違う薄ぼんやりした感覚になってしまったと感じたことがあったのです。

目の前に薄い膜が出来てしまったような感じと言ってもいいかもしれません。今となっては、そうした経験をしたことの記憶があるだけで、もっとリアルに世界を感じていたことの感覚を思い出すことはできません。

それはきっと、私自身が自分の肉体の中に完全にもぐってしまったときだったのだろうと思うのです。そのときには、もうすでに自我はあって自分のことを今と同じように自覚していたはずです。

けれども、まだ無邪気な部分が残っていて、その体験をする前までは、時々は世界と一つの状態で生活していたのだろうと思うのです。

それは考えただけでもすばらしい感覚なはずです。残念なことに、そのときを境に自分をこの身体の中に閉じ込めてしまったのでしょう。

それからずっと、もう二度と身体を度外視して世界と一体である経験をしなくなったのです。だからこそ、ダイレクト感を失ってしまったと感じているのでしょうね。

今のこの感覚というのは、身体という牢獄に自分を放り込んでしまった状態のままでいることからやってくる不快感なのでしょう。

ところが最近、自分が世界を見ている場所に注意を向け続けていると、ある瞬間いつもと同じ目の前の空間がとても新鮮に感じる瞬間がやってくることがあることに気づきました。

今までのところ、その感覚はすぐになくなってしまうのですが、それはまるで重苦しい着ぐるみの外へ出て、直接空気に触れたような感じなのです。

もしかしたら、これが幼いころに感じていたあのダイレクト感に近いものかもしれないと思うようになりました。

自分が身体の内側にいるという、とんでもなくしつこい幻想を手放すことができたなら、あの清々しいリアルな感覚がまた戻ってくるのかもしれないと思うだけで、とても嬉しい気持ちになれます。

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